エステや学習塾の長期契約で困ったら?中途解約のルールと相談先
エステや学習塾の長期契約、やめたいのにやめられない?
エステサロンでの痩身コース、語学教室や学習塾での長期にわたる受講契約、パソコン教室の契約など、数ヶ月から数年にわたり、数十万円、ときには百万円を超えるようなサービスを契約されたものの、「思ったような効果がない」「事情があって通えなくなった」「契約内容と話が違う」といった理由で、契約をやめたい、と悩んでいらっしゃる方もいるかもしれません。
しかし、契約期間が長かったり、金額が高額だったりすると、「今からやめることはできないのではないか」「高額な解約料を請求されるのではないか」と不安になり、どうすれば良いか分からず、一人で抱え込んでしまうことも少なくありません。
このような特定サービスの長期・高額契約に関するトラブルは、決して珍しいことではありません。適切な知識と、相談できる場所を知っておけば、解決への道が開ける可能性があります。一人で悩まず、まずはこの先の情報をご確認ください。
特定のサービス契約は法律で守られています
エステや語学教室、学習塾など、特定のサービスに関する長期・高額な契約は、特定商取引法という法律で「特定継続的役務提供(とくていけいぞくてきえきむていきょう)」として定められています。これは、長期間にわたり、繰り返しサービスを提供し、かつ比較的高額な契約となる特定のサービスについて、消費者トラブルを防ぐためのルールを定めたものです。
特定継続的役務提供に指定されている主なサービスは以下の通りです。
- エステティックサロン(期間1ヶ月超、金額5万円超)
- 語学教室(期間2ヶ月超、金額5万円超)
- 学習塾、家庭教師(期間2ヶ月超、金額5万円超)
- パソコン教室(期間2ヶ月超、金額5万円超)
- 結婚相手紹介サービス(期間2ヶ月超、金額5万円超)
- 美容医療(期間1ヶ月超、金額5万円超)
これらのサービスを契約した場合、一定期間内であれば「クーリング・オフ」といって、無条件で契約を解除することができます。通常、契約書面を受け取った日から8日間(サービスの種類によっては20日間)以内であれば、クーリング・オフが可能です。
クーリング・オフ期間が過ぎても中途解約できる?
クーリング・オフ期間を過ぎてしまった場合でも、「やっぱり契約をやめたい」というとき、すぐに諦める必要はありません。特定継続的役務提供に該当する契約であれば、法律に基づいて中途解約ができるルールが定められているからです。
中途解約をする場合、すでに受けたサービス分の料金と、契約解除によって業者に生じる損害に対する解約料を支払うことになります。この解約料についても、法律で上限額が決められています。上限額を超えて請求されることはありません。
中途解約の際の精算ルール(概要):
支払うことになる金額は、「受けたサービス分の料金」と「解約料」の合計です。
- 受けたサービス分の料金: 契約単価や計算方法が契約書に記載されています。
- 解約料の上限: サービスの種類や解約のタイミング(サービス開始前か後か)によって異なりますが、例えばエステなら2万円または契約残額の10%のいずれか低い額、学習塾なら1.1万円または契約残額の20%のいずれか低い額など、法律で上限が決められています。
業者は、すでに受け取った金額から、この支払うべき金額を差し引いた残りを消費者に返金しなければなりません。
ただし、この中途解約のルールは、あくまで特定継続的役務提供に該当する契約の場合です。ご自身の契約がこれに該当するか、契約書をよく確認することが重要です。
中途解約したい時の具体的なステップ
-
契約内容を確認する: まずは、お手元にある契約書面(契約書や概要書面)を隅々までご確認ください。契約期間、総額、中途解約に関する条項、清算ルールなどが記載されています。どのようなサービスを、いつまで、いくらで契約したのかを正確に把握することが第一歩です。
-
業者に解約の意思を伝える: 契約書を確認したら、業者に中途解約したいという意思を伝えます。電話で伝えることも可能ですが、後々の記録を残すためには、書面(例えば内容証明郵便など)で送る方がより確実です。まずは電話で連絡してみるのも良いですが、その際はいつ、誰と話し、どのような内容を伝えたのか、必ずメモを取っておきましょう。
-
業者との交渉がうまくいかない場合: 業者に解約を申し出たのに、法律で定められた以上の高額な解約料を請求されたり、「解約はできない」と言われたりする場合があります。このような場合は、ご自身だけで解決しようとせず、専門の相談機関に助けを求めることが大切です。
どこに相談すれば良いか?
特定継続的役務提供契約の中途解約トラブルについて、頼りになる相談先があります。一人で悩まず、まずは電話をかけてみましょう。
消費生活センター/国民生活センター
最も身近で頼りになる相談先です。 商品やサービスに関するあらゆる消費者トラブルについて、無料で相談できます。専門の相談員が、トラブル解決のためのアドバイスをくれたり、事業者との間のあっせん(間に入って話し合いを進めること)をしてくれたりすることがあります。
- 相談できる内容: エステ、語学教室、学習塾などの契約トラブル全般。中途解約の可否、解約料の計算、業者との交渉方法など。
- 連絡方法: 全国の消費生活センターにつながる「消費者ホットライン 局番なし188(いやや!)番」に電話してください。ガイダンスに従って操作すると、お住まいの地域の消費生活センターにつながります。
- 受付時間: センターによって異なりますが、平日の午前中から夕方まで受け付けている場合がほとんどです。土日祝日も相談を受け付けているセンターもあります。電話をかける前に、国民生活センターのウェブサイトなどで最寄りの消費生活センターの情報を確認すると良いでしょう。
- 相談前に準備しておくと良いこと: 契約書や概要書面、領収書や支払い状況が分かるもの、業者との間で交わした手紙やメール、会話のメモなど、トラブルに関する情報はできるだけ集めて整理しておくと、相談がスムーズに進みます。
法テラス(日本司法支援センター)
経済的な理由で弁護士や司法書士に相談することが難しい方のために、無料の法律相談や、弁護士・司法書士の費用の立替えなどを行っている国の機関です。
- 相談できる内容: 借金問題、労働問題、離婚、相続など、幅広い法律問題について相談できます。消費者トラブルに関する相談も可能です。消費生活センターで解決が難しい場合や、法的な手続き(裁判など)が必要になる可能性がある場合に相談を検討できます。
- 利用条件: 収入や資産などが一定の基準以下である必要があります。
- 連絡方法: まずは「法テラス・サポートダイヤル 0570-078374(おないやみなし)」に電話してください。利用条件を満たしているか、どのような相談ができるかなどを案内してくれます。無料の法律相談を利用するには、事前に予約が必要です。
- 相談前に準備しておくと良いこと: 消費生活センターに相談する際と同様に、トラブルに関する書類や情報を整理しておきましょう。収入や資産に関する情報も必要になる場合があります。
その他(弁護士会、司法書士会など)
法テラスの条件に該当しない場合や、最初から専門家(弁護士や司法書士)に相談したい場合は、お近くの弁護士会や司法書士会が実施している法律相談を利用することもできます(有料の場合が多いです)。
トラブルを未然に防ぐために
今後のトラブルを防ぐためにも、サービス契約をする際は以下の点に注意しましょう。
- 契約内容をよく確認する: 契約期間、総額、支払い方法、そして「中途解約に関するルール」を契約書面で必ず確認し、納得できるまで説明を受けましょう。
- その場ですぐに契約しない: 一度持ち帰ってじっくり考えたり、家族や友人に相談したりする時間を持ちましょう。「今だけ」「あなただけ」といった言葉には注意が必要です。
- 無理のない契約か検討する: 契約期間や金額が、ご自身のライフスタイルや経済状況に合っているか、冷静に判断しましょう。
- 分からないことは質問する: 契約書の内容やサービスについて、少しでも分からないことがあれば、遠慮せずに質問し、納得できるまで説明を受けましょう。
困ったら、まずは一歩踏み出しましょう
エステや学習塾などの長期・高額契約に関するトラブルは、時間が経つほど解決が難しくなる場合があります。一人で悩んでいても、不安が大きくなるばかりです。
まずは、勇気を出して、お近くの消費生活センター(消費者ホットライン188番)に電話をかけてみてください。専門の相談員が、あなたの状況を聞き、解決のための具体的なアドバイスをしてくれます。
あなたの抱える不安が少しでも軽くなり、トラブル解決に向けて一歩踏み出すための一助となれば幸いです。