解約したいのに業者と連絡取れない 定期購入トラブルを解決するための「内容証明」の書き方・送り方
定期購入トラブル、業者と連絡が取れない時の困りごと
「お試し」のつもりで申し込んだはずが、いつの間にか「定期購入」になっていた。慌てて解約しようとしても、電話はいつも話し中、メールを送っても返信がない。そんな経験はありませんか。
特に健康食品や化粧品の定期購入では、このようなトラブルが後を絶ちません。解約できないまま商品が次々と届き、代金だけ引き落とされてしまう。気づけば高額な請求になっていた、というケースも少なくありません。
悪質な業者は、最初から解約の連絡が取りにくいようにしていたり、消費者が諦めるのを待っていたりします。しかし、そのまま放置してしまうと、被害が拡大するばかりです。
連絡が取れない業者に対して、どのように解約の意思を伝えれば良いのでしょうか。また、自分で対応するのが難しいと感じたとき、どこに相談すれば良いのでしょうか。
この先では、業者と連絡が取れない場合の具体的な対処法として有効な「内容証明郵便」について、その役割や書き方、送り方を詳しくご説明します。そして、一人で解決が難しい場合の相談先についてもご紹介します。
なぜ業者と連絡が取れないのか?
正当な理由なく解約を妨害したり、連絡を絶ったりする業者は、消費者が泣き寝入りするのを狙っている可能性があります。
- 電話がつながりにくい: 回線数を極端に少なくしている、オペレーターの数を減らしている。
- メールに返信がない: 問い合わせ用のメールアドレスがない、または確認していない。
- 住所が存在しない、または虚偽: 書面を送ろうにも送れない。
- 担当者が逃げる: 責任の所在を曖昧にする。
このような業者は、最初から消費者を騙す意図を持っている場合や、契約内容について誤解させるような表示をしていた可能性も考えられます。
まず試したいこと:電話以外の連絡手段
電話がつながらない場合でも、諦めずに他の方法を試してみましょう。
- メール: 契約書やウェブサイトに記載されているメールアドレス宛てに、解約したい旨を明確に伝えます。送信記録を残しておきましょう。
- FAX: FAX番号があれば、解約通知書を送ります。送信記録を残しておきましょう。
- ウェブサイトの問い合わせフォーム: フォームがあれば、そこから連絡します。送信完了画面をスクリーンショットで保存するなど、記録を残しましょう。
- 書面(普通郵便): 業者に登録されている住所宛てに、解約したい旨を記載した書面を郵送します。控えを必ず取っておきましょう。
これらの方法で連絡を試みた記録は、後でトラブルを相談する際に非常に重要になります。「いつ、どのような方法で、どのような内容の連絡を試みたか」をメモしておいてください。しかし、普通郵便では相手が受け取ったかどうか確認できませんし、「受け取っていない」と言い逃れされる可能性もあります。
業者と連絡が取れない場合の次のステップ:内容証明郵便
電話もつながらず、他の方法でも業者からの応答がない場合、次に有効な手段の一つが「内容証明郵便」です。
内容証明郵便とは、「いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたか」ということを、日本郵便が証明してくれる制度です。
これにより、あなたが業者に対して「〇月〇日までに契約を解約する意思表示をした」という事実を、公的に証明することができます。悪質な業者に対しても、「このまま無視していると、消費者は次の行動に出るかもしれない」というプレッシャーを与える効果も期待できます。
内容証明郵便を送ることは、裁判などの法的手続きに進む前に、あなたが業者に対して正式な意思表示を行った証拠となります。
内容証明郵便の具体的な書き方
内容証明郵便は、決められた書式で作成する必要があります。手書きでもパソコンでも作成できますが、文字数や行数に制限があります。
主なルール:
- 文字数・行数制限:
- 縦書きの場合: 1行20字以内、1枚26行以内
- 横書きの場合: 1行20字以内、1枚26行以内 または 1行13字以内、1枚40行以内 または 1行26字以内、1枚20行以内
- 使用できる文字: 漢字、ひらがな、カタカナ、数字。句読点やかっこ、記号なども使用できますが、1文字として数えられます。(文字や記号のカウント方法には細かいルールがあります)
- 修正: 訂正・削除は、その箇所に二重線を引き、訂正印を押して、欄外に「〇字削除、〇字加入」などと記載します。
- 文書数: 同じ文書を3部作成します。
- 業者(受取人)に送付するもの
- 差出人が控えとして保管するもの
- 郵便局が保管するもの
記載する主な内容:
定期購入の解約を求める内容証明郵便には、通常、以下の内容を記載します。
- タイトル: 例:「解約通知書」
- 差出人の情報: あなたの氏名、住所、電話番号。
- 受取人(業者)の情報: 業者の会社名、代表者名(分かれば)、住所。契約書や送られてきた商品に記載されている情報を正確に書きます。
- 通知内容:
- いつ、どのような商品(商品名、数量など)を契約したのか。
- 契約した覚えがない場合や、解約の条件について誤解があった場合は、その旨を明確に記載します。
- この契約を明確に解約する意思表示であること。
- 今後の商品の発送や代金の請求を停止すること。
- すでに支払った代金の返還を求める場合は、その旨と返還を求める金額。
- 期日までに適切な対応がない場合、法的な措置を検討する可能性があること。
- 作成年月日
【テンプレート例】
解約通知書
〇〇年〇月〇日
(差出人)
〒xxx-xxxx
〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
氏名:〇〇 〇〇 印
電話番号:〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
(受取人)
〒yyy-yyyy
〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
会社名:〇〇株式会社
代表者名:〇〇 〇〇 様
通知書
私は貴社に対し、以下の通り通知いたします。
私は貴社から、〇〇年〇月〇日、インターネット広告を通じて「〇〇(商品名)」の定期購入契約を申し込みましたが、この契約について、〇〇(具体的な理由:例:広告と内容が異なる、解約条件の説明がなかった、等)を理由として、本日をもって**明確に解約いたします**。
つきましては、今後の商品の発送及びこれにかかる代金の請求を直ちに停止してください。
万が一、本通知到着後も商品の発送や代金の請求が続く場合は、しかるべき法的な措置を検討せざるを得ません。
以上
【注意点】 上記のテンプレートはあくまで例です。ご自身の状況に合わせて内容を修正し、必要な情報を正確に記載してください。特に、契約日、商品名、金額、解約の理由などは具体的に書くことが重要です。
内容証明郵便の出し方
内容証明郵便は、集配郵便局または地方郵便局の窓口で差し出します。どの郵便局でも扱っているわけではないため、事前に確認が必要です。
手続きの流れ:
- 文書の作成: 上記のルールに従って、同じ文書を3部作成します。
- 封筒の準備: 差出人と受取人の住所・氏名を記載した封筒を準備します。封筒に記載する住所・氏名は、内容証明文書に記載したものと完全に一致している必要があります。
- 郵便局へ持ち込み: 作成した文書3部と封筒を郵便局の窓口に提出します。
- 内容の確認: 郵便局の担当者が、文書の記載内容や形式がルールに沿っているか確認します。不備があれば修正を求められます。
- 手続きと支払い: 確認が済んだら、内容証明郵便の料金(郵便料金、内容証明料、一般書留料)を支払います。
- 受け取り: 郵便局で文書1部と謄本証明書(内容証明文書の控えであることを証明する書類)を受け取り、大切に保管します。
費用:
内容証明郵便の費用は、文書の枚数などによって異なりますが、基本料金は以下の合計となります(2024年4月現在)。
- 郵便料金(定形郵便物の場合):84円~
- 一般書留料:480円~
- 内容証明料:1枚 440円、2枚以上 660円
合計で概ね1,000円~1,500円程度かかります。これに配達証明をつけるとさらに380円がかかりますが、配達証明をつけることで相手がいつ受け取ったかを確認できるため、トラブル解決には有効です。
内容証明郵便を送っても反応がない場合
内容証明郵便は、業者にあなたの解約意思を証明する有力な証拠となりますが、送ったからといって必ず業者が解約に応じたり、返金に応じたりするわけではありません。悪質な業者の中には、内容証明郵便さえ無視するところも残念ながら存在します。
内容証明郵便を送っても状況が変わらない場合、次のステップを検討する必要があります。それは、専門機関への相談です。
「相談するのは気が引ける」「どこに相談すれば良いのか分からない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、一人で抱え込んでいても、トラブルが自然に解決することはほとんどありません。専門機関は、消費者トラブル解決の専門家です。あなたの状況を聞き、解決に向けた具体的なアドバイスやサポートをしてくれます。
どこに相談すれば良い?
定期購入トラブルで困ったとき、頼りになる相談先があります。
消費生活センター
役割: 消費者トラブルに関する相談を無料で受け付け、解決のためのアドバイスや、業者とのあっせん(間に入って話し合いを促すこと)を行ってくれます。
相談できる内容: 定期購入トラブル、架空請求、詐欺など、あらゆる消費者トラブルについて相談できます。
相談方法: * 電話: 全国の消費生活センターにつながる共通の電話番号「188(いやや!)」を利用すると便利です。最寄りの消費生活センターにつながります。 * 受付時間: 多くのセンターは平日9時~17時頃まで受付していますが、土日祝日も受け付けているセンターもあります。事前に確認しましょう。 * 相談前に準備しておくと良いこと: * 契約に関する書類(申込書、契約書、確認メールなど) * 商品やサービスに関する資料(広告、パンフレットなど) * 業者とのやり取りの記録(電話の記録、メールの履歴、内容証明郵便の控えなど) * トラブルの経緯をまとめたメモ
「188」に電話をかけると、まず自動音声ガイダンスが流れます。ガイダンスに従って、郵便番号を入力すると、お住まいの地域の消費生活相談窓口につながります。初めて電話をかけるのは少し勇気がいるかもしれませんが、相談員は専門家ですので、安心して状況を話してみてください。
弁護士・司法書士
役割: 法律の専門家として、法的な観点からトラブル解決を目指します。業者との交渉、訴訟などの法的手続きを代理で行うことができます。
相談できる内容: 内容証明郵便の作成・送付代行、業者への法的な請求、損害賠償請求など。
相談方法: * 弁護士会、司法書士会などで実施している無料相談会を利用する。 * 法テラスを利用する(後述)。 * 個人の事務所に直接問い合わせる。
内容証明郵便の作成や送付を自分で行うのが難しいと感じる場合や、内容証明を送っても業者からの応答がない場合など、より専門的な対応が必要な場合に相談を検討すると良いでしょう。費用が発生する場合があるため、事前に確認が必要です。
法テラス(日本司法支援センター)
役割: 法的なトラブルを抱えた方が、専門家(弁護士、司法書士など)による法的支援を受けられるようにするための公的な機関です。
相談できる内容: 消費者トラブルを含む、民事、刑事、家事など、幅広い法的な問題について情報提供や無料相談を行っています。経済的に余裕がない方は、弁護士費用や司法書士費用の立替制度を利用できる場合があります。
相談方法: * 電話: 法テラス・サポートダイヤル 「0570-078374(おなやみなし)」 に電話します。 * 受付時間: 平日9時~21時、土曜日9時~17時(祝日、年末年始を除く)。 * 相談前に準備しておくと良いこと: * トラブルの経緯をまとめたメモ * 関連書類
法テラスでは、どのような制度があるのか、どのように専門家につながることができるのかといった情報提供を受けることができます。経済的な不安から専門家への相談をためらっている方も、まずは法テラスに問い合わせてみることをお勧めします。
まとめ
定期購入トラブルで業者と連絡が取れない場合、そのまま放置せずに行動することが大切です。まずは電話以外の連絡手段を試み、その記録を残しましょう。
それでも連絡が取れない悪質な業者には、内容証明郵便を送ることが有効な手段となります。内容証明郵便は、あなたの解約意思を公的に証明し、業者にプレッシャーを与える効果があります。自分で作成・送付することも可能ですが、書き方や出し方に不安がある場合は、消費生活センターや弁護士、司法書士に相談することも検討してください。
そして、内容証明郵便を送っても解決しない場合や、そもそも書面での手続きが難しいと感じる場合は、迷わず消費生活センターや法テラスなどの専門機関に相談しましょう。専門家があなたの状況に合ったアドバイスやサポートをしてくれます。
一人で悩まず、適切な手段と相談先を活用して、消費者トラブルの解決を目指しましょう。