友人からの「稼げる」誘い、これって大丈夫?マルチ商法?トラブルの見分け方と相談先
友人・知人からの誘い、困っていませんか?
親しい友人や知人から、「すごく稼げる話があるんだけど」「体にいい商品があって、周りに広めると収入になる」などと誘われて、戸惑っているということはありませんか。断りにくい関係性の相手からの誘いは、どう対応すればいいか迷ってしまうものです。
もしかすると、それは「マルチ商法」や「ネットワークビジネス」と呼ばれるものかもしれません。そして、安易に始めてしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。
ここでは、マルチ商法とはどのようなものか、よくある手口やトラブル事例、そして「これって怪しいな」「困ったな」と感じたときに、どこに相談すれば良いのかを具体的にご説明します。
マルチ商法(ネットワークビジネス)とは
「マルチ商法」や「ネットワークビジネス」は、法律では「連鎖販売取引(れんさはんばいとりひき)」と呼ばれています。これは、商品やサービスを契約して、今度は自分が買い手(会員)を勧誘し、その買い手がさらに別の買い手を勧誘するという形で組織を広げていくビジネス形態です。会員は、自分が売った商品の販売手数料や、自分が勧誘して組織に加入した人(子会員)の売上の一部などが収入になる、と説明されることが多いです。
特定商取引法という法律で厳しく規制されていますが、悪質な業者や勧誘者によるトラブルが後を絶ちません。
「ねずみ講」との違い
マルチ商法と似ているものに「ねずみ講」がありますが、これは全くの別物で、法律で禁止されています。ねずみ講は、商品のやり取りがなく、金銭の配当だけを目的に会員を増やすものです。マルチ商法は形式的には商品の販売を伴いますが、実態として商品がほとんど流通せず、会員獲得の割合に応じて金銭を受け取るようなケースは、ねずみ講とみなされる可能性もあります。
マルチ商法によくある誘いの手口
親しい間柄だからこそ、断りにくい状況が作られることが多いです。
- 「会わせたい人がいる」「いい話があるんだけど」と喫茶店やファミレス、相手の自宅などに呼び出される。
- 最初はビジネスの話を伏せ、「美容にいいものがある」「健康にいい飲み物がある」などと商品に興味を持たせようとする。
- 「権利収入が得られる」「寝ていてもお金が入ってくる」など、楽して儲かることを強調する。
- 「今始めれば、最初のメンバーになれて有利だ」「あなたなら成功できる」などと、特別感を演出する。
- 説明会やセミナーへの参加を強く勧められる。
- 契約するまで長時間にわたって帰してもらえない、断ると人間関係が悪化するとほのめかされる。
特に、契約するまで目的や内容をはっきり告げない「目的隠匿勧誘」は、特定商取引法で禁止されています。
どんなトラブルが多いか
- 高額な商品購入や初期費用: 入会するために数十万円、数百万円といった商品をまとめて購入させられたり、高額な研修費用などを請求されたりします。
- 在庫を抱える: なかなか売れず、大量の商品を自宅に抱え込んでしまうケースが多いです。
- 収入が得られない: 説明されたような収入はごく一部の人しか得られず、多くの人は収入ゼロか赤字になります。
- 人間関係の悪化: 友人や知人を勧誘することで、関係が壊れてしまうことがあります。
- 解約や返品が難しい: 一度契約すると、やめたいと思っても応じてもらえない、返品を拒否されるといったトラブルが起こります。
「これって怪しい?」と感じたらチェックすること
- 契約内容が分かりにくい: 仕組みが複雑で、何で収入が得られるのか、リスクは何かといった説明が曖昧ではないか。
- リスクや負担の説明がない: うまい話ばかり強調され、在庫を持つリスクや収入が得られない可能性、初期費用の負担などについて説明がない。
- 強引な勧誘: 断っているのに何度も勧められる、契約するまで帰れない状況にされる。
- クーリング・オフの説明がない: 契約書面にクーリング・オフ(※)についての記載がなかったり、説明がなかったりする。
- 解約や返品の条件が不明瞭: 契約をやめたい場合や、商品を返品したい場合のルールがはっきりしない。
※クーリング・オフとは、特定商取引法などで定められた、一定期間内であれば無条件で契約を解除できる制度です。マルチ商法の場合、契約書面を受け取った日または商品を最初に受け取った日のいずれか遅い方から20日以内であればクーリング・オフが可能です。ただし、自分から店舗に出向いて契約した場合や、インターネット等で申し込んだ場合は、クーリング・オフの適用外となることがあります。また、一度使用または消費した商品(消耗品に指定されているもの)はクーリング・オフできません。
困った時の具体的な相談先
「やっぱりおかしい」「やめたいけどどうすればいいか分からない」と感じたら、一人で悩まず、すぐに専門の機関に相談しましょう。
1. 消費生活センター・国民生活センター
消費者トラブルに関する専門知識を持った相談員が対応してくれます。商品や契約の解約・返金に関する問題など、幅広い相談に乗ってくれます。必要に応じて、事業者との間のあっせん(話し合いを仲立ちすること)をしてくれる場合もあります。
- 相談できること: マルチ商法に関する契約内容の確認、クーリング・オフや解約の手続き、業者との交渉方法など、具体的なアドバイスがもらえます。
- 電話番号: 全国共通の相談窓口として、局番なしの「188(いやや)」番があります。お近くの消費生活センターにつながります。
- 受付時間: 相談窓口によって異なります。土日祝日も対応しているセンターもありますので、188にかけるか、国民生活センターのウェブサイトでご確認ください。
- 相談前の準備:
- 契約書、概要書面(契約前に渡される事業や契約の概要を書いた書類)
- 領収書、振込明細など支払いの証拠となるもの
- 勧誘された時の資料、メール、LINEなどのやり取りの記録
- いつ、どこで、誰から、どのような内容で誘われたか、契約に至った経緯をまとめたメモ
- 商品の現物(もし手元にあれば)
これらのものがあると、相談がスムーズに進みます。
2. 法テラス(日本司法支援センター)
法テラスは、法的なトラブル解決のための情報提供や、経済的に余裕のない方が弁護士・司法書士に相談するための費用を立て替える制度(民事法律扶助制度)などを提供しています。消費者トラブルも法的な問題を含むため、相談先の一つとなります。
- 相談できること: 法的な観点からのアドバイスや、問題解決のためにどのような法的手続きがあるか、弁護士や司法書士に依頼する場合の費用などについて情報が得られます。民事法律扶助制度を利用できる可能性があるかどうかも確認できます。
- 電話番号: 0570-078374 (お近くの法テラスにつながります)
- 受付時間: 平日 9:00~21:00、土曜 9:00~17:00(祝日・年末年始を除く)
- 相談前の準備: 消費生活センターへの相談と同様に、トラブルに関する経緯や書類をまとめておくと良いでしょう。収入など、民事法律扶助制度の利用条件に関わる情報も準備しておくとスムーズです。
3. 弁護士会・司法書士会
より専門的な法的アドバイスが必要な場合や、具体的な法的手続き(内容証明郵便の作成、訴訟など)を検討する場合は、弁護士や司法書士に直接相談することも可能です。各地域の弁護士会や司法書士会では、無料または低額の法律相談を実施している場合があります。
相談する前に準備しておくと良いこと
相談をスムーズに進めるために、以下のことを準備しておきましょう。
- トラブルの経緯を時系列でメモする:
- いつ(年月日)、どこで(場所)、誰から(勧誘者の氏名や関係性)、どのような内容で誘われたか。
- 説明会やセミナーに参加した場合、その日時や場所、内容。
- いつ契約したか、契約した場所。
- 契約内容(商品名、金額、支払い方法など)。
- 支払い済みの金額、まだ支払っていない金額。
- 解約を申し出た場合、その日時や相手の対応。
- 関連書類を整理する:
- 契約書面、概要書面
- 領収書、支払いに関する書類
- 商品パンフレット、勧誘資料
- メール、LINE、手紙など、業者や勧誘者とのやり取りがわかるもの
これらの情報があると、相談員の方が状況を正確に把握し、的確なアドバイスをしやすくなります。
未然防止のために
- 安易な儲け話には乗らない: 「簡単に大金が稼げる」「何もしなくても収入が入る」といった話は、まず疑ってかかりましょう。
- 契約は慎重に: その場で決めず、一度家に持ち帰って冷静に考えましょう。分からないことは納得がいくまで質問し、リスクについても十分に確認しましょう。
- きっぱり断る勇気を持つ: 親しい人からの誘いでも、「興味がない」「必要ない」と断ることも大切です。あいまいな返事をすると、かえって付け込まれてしまうことがあります。
- おかしいと思ったら、まず相談: 少しでも不安や疑問を感じたら、契約する前に消費生活センターなどに相談してみましょう。契約してしまった後でも、早めに相談することが解決につながります。
まとめ
友人や知人からのマルチ商法の誘いは、人間関係が絡むため、断りにくく、トラブルになった時も一人で抱え込んでしまいがちです。しかし、泣き寝入りする必要はありません。
怪しいと感じたら、まずは契約内容やリスクを冷静に見極めること、そして「困ったな」と思ったら、今回ご紹介した消費生活センターや法テラスなどの専門機関に、勇気を出して相談することが解決への第一歩です。一人で悩まず、ぜひ専門家の力を借りてください。